梅元建治

Talkin’ About Nagasaki ―ゲスト:梅元 建治さん[長崎市の文化財・景観資産が抱える問題]

市民活動、まちづくり、行政への各種提言など、まちづくりの分野で活躍する梅元建治さん。前回のインタビュー「01.長崎市の文化財・景観資産が抱える問題」では、長崎市が抱える文化財とその活用に関する問題、機能不全を起こしている仕組みについてお話しいただきました。今回は長崎市公会堂のこと、そして、景観資産の活用についてのお話です。

【目次】

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02.持続可能なまちづくりのために

長崎市公会堂に足りなかった“活用”の視点

久保:梅元さんがおっしゃるとおり、文化財の活用について真剣に考えて、進めていくことが文化財を残していくには不可欠だとは思いますが、例えば長崎市公会堂は結局解体されましたよね。

梅元:2017年に解体された長崎市公会堂は、「あの建物は価値があるから残すべきだ」と言う市民活動が活発だったよね。僕も長いこと建築を仕事にしてきたし、建築が好きで建物のディテールが素晴らしいとか、建築された経緯が長崎国際文化センター建設事業の一環から来ているとか理解できる。公会堂で初めてコンサートを聞いたとか、公会堂の舞台に立ったとかノスタルジックな思いが個人的にもあるから、壊される時に「あの建物が壊されるのか。市民活動も頑張ってやって来ていたのにどうして…。」という気持ちがあった。

だけど、今僕らは振り返って、「前川國男さんが手がけた上野の東京文化会館は残って、なぜ長崎市公会堂は壊されたのか」を冷静に考えないといけない。先ほどの活用の話だけど、長崎市公会堂は使い方を詰めていなかったと思うんだ。東京文化会館は、コンサートや公演がない時でもミュージアムショップやカフェが開いていて東京都交響楽団が本拠地としていて練習をしているから音が漏れてくるし、電気も点いている。長崎市公会堂は公演やコンサートがない時は真っ暗で静まり返っていたよね。

久保:確かに公会堂前の広場も、ベンチなどほとんど無くて休んで過ごせるような水辺や木陰もなかったですよね。憩いの場ではなかった。有機的に市民の生活と文化財がつながっていくことが必要だということですね。

梅元:広場も長崎くんちや植木市、物産展の時しか活用されていなかったからね。だから、本来考えなければいけなかった事は、残す残さないの話の前に、市民と建物がどう関わればいいのかという活用の話で、そこの視点が足りなかったんじゃないかと僕は思う。例えば長崎交響楽団が公会堂を練習場にしているとかあり得た話なのにね。練習場にするには音響の問題など色々ハードルがあったと思うけど…。あの局面になったら、残すか残さないか、市役所をどうするのかという話になってしまった。

久保:それは非常に残念だったし、これからも文化財の活用、人との関わり方を再考し変えていかないと、現状を考えれば同じようなことが起こりつづけますよね。持続可能な都市になっていかない。◯◯跡地という石柱だけたくさんあるような、無個性の都市になってしまう。

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梅元:そう、市民が大事なものだという風に認識をしないから。今全部にそれが言えるんだよ。小島養生所も普段から関わっていないから一部の人しか大事だと認識していない。文献上の歴史では残っているけれど、関わりのない市民からすると、そんなこと知らないよと忘れ去られてしまう。そういう意味で、最初のステップは市民が活用できるようなスキーム・枠組みを持った計画を入れながら、どうやって活かせばいいのかという話をする必要がある。しかし現状といえば、売却した方がいいのか、保存しながら活用した方がいいのか、更地にした方がいいのかとか、そういった議論さえも、オープンにされることなく、いつの間にか行政と業者だけで決めていたりするから。ホームページで知らせていますよといった程度で、関わらせようとしていないんだよね。実際には、議会がそういう風にしてしまっているところもあって、市民より先になぜ議会の人間に知らせないのかと言うからね。

他地域に見る景観資産の活用事例

久保:景観まちづくり審議会で認定されたものが活用されるようになると、また少し変わってきそうですよね。

梅元:すでにいくつか事例もあって、南島原市有家にある日本酒の造り酒屋の吉田屋さんの蔵が景観資産に認定されていて、補修が必要だったから行政がバックアップを少し行なっているんだ。景観資産に認定されれば、地域の人たちにとっても、自然と大切なものだと認識されていき、観光地としても経済化がされていく。普段は、定期的に蔵開きや蔵めぐりといったイベントを開催しているね。行政としてもこれらの発信の仕方を見直そうと今話をしているところだね。

その他に、平戸の街並みや武家屋敷も景観資産に認定されていて、平戸藩お庭めぐりなどを開催しているんだけど、イベントに参加した人が、今度はクラフト市を開催したり、カフェをしたりと活発化してきているんだ。そのパッケージを長崎市深堀地区の人が学びに行ったりもね。広域でそういった活動が始まりつつある。今まではそれを文化財でやろうとしていたんだけど、規制があるし文化財に指定されるとなかなか改装をすることが出来ない。景観資産はあくまでも景観が資産だから、外側は維持しないといけないけど内側は活用できるからね。

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久保:文化財と景観資産は違うんですね。景観資産だからできることがある、と。

梅元:例えば、この東山手洋風住宅群は文化財で、伝建地区だから基本的にいじれない。たまたま共同住宅ということで残されることになって、認定される前の最後の姿が畳だったので、洋館には似つかわない畳の部屋があるんだよね。でも、景観資産ぐらいにして、畳の部屋は改装し、カフェや宿泊施設として活用した方が実際は良いと思うんだよ。東山手の洋館だけじゃなくてグラバー園や出島も、元々は人が生活をしていた場所なんだから、そういった形で活用した方が良いんじゃないかな。

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ライター

久保 圭樹

フォトグラファー

久保 圭樹

Nagasaki365の発案・企画・設計、Webデザイン、写真撮影などを担当。普段は企業のWebサイトの企画・設計、デザイン、Webマーケティングのコンサルティングなどを仕事にしています。

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