長崎の食文化を彩る“長崎ちゃんぽん”
明治中期に「四海樓」の初代店主である陳平順が、当時日本に訪れていた大勢の中国人留学生に安くて栄養価の高い食事をさせるために考案されたとされている長崎ちゃんぽん。※諸説あり
現在では、長崎を代表する食べ物として全国的な知名度を誇ります。
長崎ちゃんぽんが人々に愛され続けている秘密は何なのか。
1964年に創業した老舗「株式会社みろく屋」の山下大作社長にお話を伺い、その秘密に迫りました。
【目次】
長崎ちゃんぽんの魅力
−栄養満点!素材のうま味が際立つ、長崎ちゃんぽん。−
山下社長、長崎県民に永く愛され続けているちゃんぽんの魅力はどこにあるのでしょうか。
山下社長:ちゃんぽんの魅力は、たくさん野菜が食べられて、お肉も魚介も入っていて、麺は食べ応えがあって満足感が得られるということが大きいと思います。そして、野菜やお肉、魚介類といった様々な材料のうま味が混ざり合い、掛け合わされることによっておいしさが倍増されることも魅力のひとつです。海の幸も山の幸も沢山入っている長崎ちゃんぽんは、栄養満点だし、味に深みがあってとてもおいしいんです。
長崎ちゃんぽん特有のおいしさの秘密はそこにあるんですね。そういえば先日中華街でちゃんぽんを食べたときに、家で食べていた味と違ったような気がしたんですが、ちゃんぽんの味は以前と比べて変わっているのでしょうか。
山下社長:ちゃんぽんの味は、昔から家庭やお店によって全然違うのも特徴ですね。例えば、家庭にはお母さんの考えがあって、栄養をとってほしいから野菜を多めに入れたり、お肉を入れる代わりにカロリーの低い海鮮を入れたりと様々です。お店で出されるちゃんぽんのスープも、鶏ガラだけを使ったものや豚骨だけを使ったもの、ブレンドされているものもあるんですよ。
人それぞれに小さい頃から食べてきた味があって、ちゃんぽんは長崎県民にとってアイデンティティのひとつになっていると思います。
みろくやのちゃんぽんに対するこだわり
−“やさしい味”で小さなお子様からご年配の方まで−
みろくやのちゃんぽんはどのような味を意識しているのでしょうか。こだわりなどあれば教えて下さい。
山下社長:みろくやのちゃんぽんは、小さなお子様からご年配の方まで、みんなが美味しく食べられるということをコンセプトにしていて、「やさしい味」を心がけて作っています。スープも鶏ガラと豚骨をブレンドしていたり、野菜を多めに入れることでまろやかな味にしているんですよ。
それと創業当時から大切にしていることは、「うまい」味ではなく「いい」味を作るということです。「うまい」味というのは、最初はおいしいですが最後の方になると飽きてきたりくどくなってしまいます。反対に「いい」味というのは、最初は物足りなく感じますが、スープまで飲み終わったあとに「あぁ、美味しかった。」となるんですよ。
みろくやのちゃんぽんは、「いい味」になるように試行錯誤を重ねて設計しています。
そのようなこだわりがあるんですね。みろくやのちゃんぽんが、いつまでもおいしく食べられ続ける理由が分かった気がします。
山下社長:ちゃんぽんは長崎の宝だと思っています。みろくやのちゃんぽんは、その代表として大切な方にお渡しいただくものなので、商品を作る際にも決して手は抜けないと思っています。
ラーメンやうどんと比べると、ちゃんぽんは全国的に知名度はあれど食べる機会はそう多くありません。みろくやの商品がちゃんぽんの入り口になることも十分に考えられるので、気を抜かずに取り組みたいです。
その気持ちが、みろくやのちゃんぽんを受け取った人にとって“長崎は魅力的だな”と感じることにも繋がっていくと思うんですよね。
みろくやの新たな取組み
−“おいしい笑顔”をつくる企業として−
みろくやさんと言えばちゃんぽんのイメージが大きいですが、その他にも何か作られていたりするのでしょうか。
山下社長:実は、お菓子も作っているんですよ。以前から、皿うどんの麺にチョコレートを絡めた「皿うどんチョコレート」を作っていましたが、最近、「N-TROIS(エヌ・トロワ)」というブランドを立ち上げ、フィナンシェの販売を始めました。
お菓子を作っているのは意外でした!なぜ“ちゃんぽん”の会社が“お菓子”を作ろうと思ったのでしょうか?
山下社長:私が社長になるときに、ちゃんぽんはもちろんのこと、お菓子にも挑戦しようと思っていたんです。ちゃんぽんだと、お客様が大切な方へ商品をお渡ししてから「おいしかったよ!」と反応を聞くまでに、どうしてもタイムラグが生じてしいますし、その輪を共有することが難しいんです。それがお菓子だと、お土産としてその場で配って食べることができるので「おいしい」の輪をみんなで共有することができるんですよね。
なるほど!しかしなぜフィナンシェなんでしょうか。
山下社長:みろくやの商品作りでは「小さなお子様からご年配まで」というのがコンセプトです。だからあまり凝ったものではなくて、シンプルで老若男女すべてのお客様がおいしく食べられる商品を作ろうと考えました。柔らかくてやさしい味、それがフィナンシェだったんです。
ブランド名にも想いを込めていて、「長崎から、午後3時のとっておきのおやつをお届けしたい」というコンセプトのもと、「長崎」の頭文字“N”と、フランス語で「3」を意味する“トロワ”を組み合わせて、「N-TROIS(エヌ・トロワ)」と名付けました。
今後のビジョン
−大変な時代だからこそ、みんなで乗り越えたい。−
みろくやさんは様々なチャレンジをしている印象を受けますが、これまで仕事をしていて一番大変だったのはどんなときですか?
山下社長:コロナ禍の今が一番大変ですね。観光客が減るのは経験したことがあっても、来ないというのは経験したことがありませんでした。オンライン通販があるとはいえ、こんなに売上が止まるというのはこれまでなかったですね。
ただ、この困難な状況は、自社の商品について考え直すいい経験になりました。「不要不急な行動はやめましょう」という動きの中で、日常的に食べてもらうためのベースももっと大切にしていく必要があると気付かされました。
早くコロナが収束して、活気あふれる長崎に戻って欲しいですね。最後に、これからどのような企業を目指しているのでしょうか。今後のビジョンを教えてください。
山下社長:今後は、みろくやのキャッチコピーである「おいしい笑顔、長崎から。」というコンセプトをもっと具現化していきたいと思っています。長崎は日本の西の端に位置するので、物流の面で他の地域と比べてハードルが高いんですよね。商品を東京に持っていった際に、最終的に物流コストがかかってしまい、他の商品との価格競争に勝つのが難しい実状があります。そこで、自社のちゃんぽん、皿うどんだけではなく、みろくやの流通チャネルを使って、長崎の美味しいものを発信することで、より多くの人に長崎の魅力を知ってもらいたいと思っています。
食べた人に「長崎に行ってみたいな。」と思ってもらえるような仕事を、これからもずっと続けていきたいですね。
株式会社みろく屋
総合本部
長崎県西彼杵郡時津町日並郷3799-2
TEL:095-881-3698
Webサイト:https://www.mirokuya.co.jp/
オンラインショップ:https://www.mirokuya.co.jp/ec/
直営店
- みろくや浜町店(本店)
長崎県長崎市浜町4番2号 - みろくや夢彩都店
長崎県長崎市元船町10番1号夢彩都B1 - みろくや長崎空港店
長崎県大村市箕島町593長崎空港2F
Text: Keisuke Yoshimoto/Photo: (株)みろく屋提供、Keiju Kubo(*1)