写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」を出版 〜写真家 山﨑政幸さん インタビュー

10月31日に写真集「記憶の島 ー 故郷・高島」を出版した高島出身の写真家山﨑政幸さんへ写真集についてのインタビューを行いました。

約8年間高島へ通って写真を撮り続けた

久保:本日はインタビューのお時間をいただき、ありがとうございます。写真集を拝見させていただき、高島とそこに住んでいた人たち、住んでいる人たちへの愛情を感じる写真集でした。いつ頃からこの写真集を構想していましたか?

山﨑:10年前の話になりますが、2011年10月8日に、翌日に高島中学校52年卒業生同窓会を控え、約30年ぶりに高島を訪れました。

炭鉱の施設や当時は島中を埋め尽くした社宅が無くなっていて、その変わり様に衝撃を受けました。高島炭鉱が1986年11月27日に閉山となって以来島の人口も減り続け、約1万8千人いた人口は300人ほどになっていました。

その時の気持ちを写真で表現しようと思ったのがこの写真集のスタートでした。それから約8年間高島へ通って写真を撮り続けました。撮影を始めたのは2012年11月30日からです。

写真をまとめたら何らかの方法で発表しようと考えていて、頭の隅に写真集出版もありましたが、資金の事を考えたら雲の上のような話でした。しかし、今年私が60歳の節目に写真集を出したいと言う気持ちが強くなり、出版することを決意して写真家の小松健一先生や様々な方にお力添えをいただきながら私の60歳の誕生日である2021年10月31日に出版することができました。本当に嬉しく思います。

高島

久保:約9割の写真をモノクロにされていることで、時間軸から開放されているように感じたのですが、写真をモノクロにした意図があれば教えて下さい。

山﨑:一部カラーにして高島の青い海や空を表現して後は白黒でも見る人に私の思いが伝わると思いました。それに学生時代に撮影した白黒フィルムから写真を使う時、写真集全体として違和感が少なくなりますよね。オールカラーにすると印刷代が白黒の倍かかる点なども考慮しながら、結果としてこの構成がベストだろうという結論に行き着きました。

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

久保:100ページほどある大作ですが、思ったようにいかなかったこともあったのではないでしょうか?

山﨑:そうですね。苦心の日々でした。私の心の眼には鉄筋コンクリートのアパートが見えるのに何度シャッターを切ってもカメラに写らない。ただ緑に覆われた更地が写るだけでした。約8年間高島へ通いましたが、風景写真だけではなかなか納得のいく写真が撮れずに、高島に住んでいる人たちにも目を向けて撮り続けました。そんなある日、学生時代に撮影したフィルムを思いだしました。部屋中探し回って出てきたそれらの写真と今の写真を合わせる事によってやっと一冊の写真集にまとまりました。

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

久保:思い出深い写真やエピソードを教えて下さい。

山﨑:思い出深い写真といえば、盆踊り会場での写真です。元々カラーなのですが、人物撮影では色が邪魔する事があります。学生時代に撮影したのですが、若い頃の懐かしい顔がならんでいます。皆の良き思い出として残ると思います。

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

次に3歳から18歳まで住んでいたアパートの部屋です。何もなく荒れた部屋にショックを受けました。ちょっとつらい写真です。

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

それから、終わりのページに配置した高島の夕景も思い出深いですね。これはカラーにしたかったのですが、白黒になりました。2015年3月12日、この日は天気が良くきれいな夕景が撮れると思い夕暮れ前から香焼の展望台で準備していましたが、太陽が沈むにつれてどんどん寒くなり手がかじかんでカメラのシャッターを切るのに苦労しました。日本の発展から忘れられた島の寂しさが伝わればいいなと思いました。

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

写真集を通して今の高島を観て感じてほしい

久保:産業の衰退や過疎化が記録される場合、テキストでその事実が客観的に記されることが多いと思うのですが、山﨑さんの写真集はパーソナルな感情がビジュアライズされていて、島の資料としてもとても貴重なものになるのではないでしょうか。この写真集をどのような方に手にとって見ていただきたいですか?

山﨑:高島の最盛期には約1万8千人が住んでいました。炭鉱閉山後、全国に散った高島の人たちや高島に関係のあった人たちにこの写真集を通して今の高島を観て感じていただきたいと思っています。

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」

久保:最後に読者の方々にメッセージをお願いします。

山﨑:高島は戦後の日本の発展を石炭で支えてきました。島の生活水準は高く沢山の人で賑わっていましたが、炭鉱閉山で島の様子は様変わりしました。この写真集は一つの産業の発展から衰退を見る事ができます。

今の日本は製造業からIT産業等への転換期で、それと照らしあわせて写真集を見ると面白いと思います。時間があればぜひ高島へ行って自分の足で歩いてみてください。

写真集をお手にとって見て何かを感じてもらえれば幸いです。

山﨑政幸写真集 記憶の島 ― 故郷・高島

写真集「記憶の島 ― 故郷・高島」
3,000円(税込み)

ご購入は以下の書店にて

  • メトロ書店 長崎本店(アミュプラザ3F)
  • 好文堂書店(長崎市浜町アーケード内)

山﨑政幸プロフィール

写真家 山﨑政幸
撮影:小松健一

1961年 長崎県高島町生まれ。中国、パキスタン、インド、タイ、香港、台湾、チベットなどを撮影しながら作品を発表。日本写真家ユニオン正組合員。

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ライター

久保 圭樹

ネットビジネスエージェント

久保 圭樹

Nagasaki365の企画・設計、Webデザイン、写真撮影などを担当。普段は企業のWebサイトの企画・設計、Web広告運用やWebマーケティングのコンサルティングなどを仕事にしています。

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