諫早・杉谷本舗 ―創業200余年の歴史と「真心」が育む菓子づくり

Sponsored by 杉谷本舗

米どころとしても有名な諫早平野が広がる街・諫早。美味しいお米を使ったおこしづくりで杉谷本舗が創業したのは、江戸後期の1811年(文化8年)。今や200年以上の歴史を誇る、長崎県下でも有数の老舗菓子店です。伝統の味を守りつつ、カステラ、おこし、どら焼き、ロールケーキ、フルーツゼリーと和洋さまざまなお菓子を作り続けています。

今回Nagasaki365は、杉谷本舗の「カステラ」、「おこし」、「どら焼き」作りの現場に密着。そのゆるぎない美味しさを生み出す職人技と、社訓でもある「真心」がこもったお菓子作りへのこだわりに迫りました。
【杉谷本舗】
江戸文化8年(1811年)創業。長崎県諫早市の老舗菓子店。
社訓に「真心」を掲げ、カステラ、おこし、どら焼きなどこだわりの和菓子・洋菓子を作り続けている。
ウェブサイト:https://sugitanihonpo.co.jp/
ネットショップ:https://shop.sugitanihonpo.co.jp/

営業部 川崎洋和様 インタビュー〜「真心」が育むおいしさ、杉谷本舗の菓子づくり

工場見学の前に、営業部長の川崎洋和さんから杉谷本舗のこだわりのお菓子や杉谷本舗の歴史についてお話を伺いました。

杉谷本舗 川崎洋和さん
杉谷本舗 営業部長 川崎洋和さん

杉谷本舗の伝統の知恵と技が生み出す、和洋さまざまな菓子

杉谷本舗では和洋さまざまなお菓子を作られていますね。

川崎:当社を代表する商品は伝統的な和菓子であるカステラ、おこし、どら焼きですが、それ以外にもゼリーや、のんのこロール(ふんわりした生地にクリームをたっぷりくるんで巻いたロールケーキ)、フォンダンショコラといった洋菓子もあります。諫早市八坂町にある本店や橘店で販売していて、カタログ通販やオンラインショップでも販売しています。

杉谷本舗本店
諫早市八坂町の杉谷本舗本店

杉谷本舗で特に力を入れていらっしゃる商品はありますか。

川崎:やはり一番はカステラですね。五三焼カステラプレミアム・ショコラはモンドセレクション金賞を連続受賞しています。それと、非常に需要が伸びてきているのがどら焼き。特に生どらは多くの引き合いを頂いています。季節に合わせて、「夏に冷たい生どら焼きを」といった切り口でも販売しています。

杉谷本舗 生どら
杉谷本舗の生どらは、年間20万個を製造する人気商品*1

お菓子づくりで特にこだわっているのはどのようなところでしょうか。

川崎:まず原材料へのこだわりがありますね。生地に使用する卵は、地元産で新鮮なことはもちろん、さまざまな種類の卵を使い分けています。小麦粉も複数の種類を使い分けたりブレンドしたりして使用しています。

何度も試練を乗り越えながら続けてきた菓子づくり

長年菓子づくりを続ける中で、杉谷本舗にとって一番大変だった時期はいつですか。

川崎:私は入社して10年ほどですが、話を聞く中ではやはり平成3年(1991年)の雲仙の噴火が一番大変だったようです。特に橘店は、雲仙と長崎の間を行き来する観光バスのお客様がかなりの割合を占めていたのですが、その観光バスがまったく来なくなってしまいました。そこで当社が考えたのが、車内販売。例えば、福岡から長崎市内へ向かう途中のサービスエリアから、バスに同乗させていただき注文を取ることにしたんです。そのような販売方法を試みるのは当社が初めてだったようです。平成3年は、各地に甚大な被害をもたらした台風17号、19号が立て続けに来た年でもありました。諫早市でも大きな被害が出て、当社でも橘店の屋根が飛んでしまったそうです。

熊本地震(2016年)以降も、雲仙~長崎をルートとする観光バスは減っています。また雲仙のホテルの多くも、以前は団体客の受け入れが多かったのですが、個人客の受け入れにシフトしつつありますね。当社もそういった周りの変化に対応すべく、卸売りやOEM(相手先ブランド製造)などにも力を入れるようになりました。

200年の歴史の中ではいろいろあったんだと思います。思うように材料が手に入らなかったりとか。戦争もありましたしね。昭和32年(1957年)の諫早大水害の時は、本店の1階まで水に浸かってしまったそうです。その時に昔の資料なども全部流されてしまって、当社にとっても大きな痛手でした。ご近所の方が亡くなったり、悲しい出来事もあったようです。

杉谷商店時代の諫早駅構内看板
本店にある杉谷商店時代の諫早駅構内看板

これまでにあった事で、杉谷本舗にとって良かったことを教えて下さい。

川崎:観光バスだけに頼らないことを目指して、卸売りを強化するための部署ができたことでしょうか。従来から近場のキヨスクなどへの卸売りは行っていましたが、関東方面をはじめさまざまな地域に商品を持って行き、杉谷本舗の商品を知っていただこうと11年前に地域営業部として立ち上げられました。その後商事部となり、さらに観光営業部と一本化することになって、現在は営業部商事課として活動しています。組織としての形も変化しながら整ってきた感じです。

組織を立ち上げたからといって、すぐに売り上げが上がる訳ではありませんので、熊本地震やその後の観光の流れの変化よりもずっと前から卸売りを強化する形になっていたことは、タイミング的に良かったと思います。観光バス頼みのままだったら、今頃とても大変だったでしょうね。

杉谷本舗の川崎洋和さん

老舗としてさらなる高みを目指す、杉谷本舗の取り組み

杉谷本舗として品質向上のためにどのような取り組みを行っていますか。

川崎:10年ほど前から毎月、月末に菓子づくりの現場の職人さんにも入ってもらって「極みプロジェクト」という会議を実施しています。製造に関わるさまざまな項目を数値化して、分析した結果や今後どう改善していくかを文書にまとめて発表してもらうんです。菓子づくりの専門家である職人さん達にとって、文書化はなじみにくい作業だと思います。しかし、職人さん達が日々当たり前のようにやっていることには、実はすごいことがたくさんあって、それを客観的な数値やデータで表すことが大事なんです。

おこしの担当者や、カステラの焼きの担当者、カステラのパッケージングの担当者など、1人ずつがさまざまなデータを記録していて、「極み」で共有しています。職人さん達は、日ごろは作業に追われているので、「極み」があることで作業を一旦振り返って考える機会にもなっているようです。「なぜ失敗したのか」を考えたり、もっとおいしくするためにはどうしたら良いのかを文書として整理するというのも品質向上につながっていると思います。菓子づくりの技術という、形がないものを伝えていかなければならないので、「極み」がその役割を担っていると思います。

杉谷本舗のおこし製造風景

ロゴを新しくするなど、ブランディングにも力を入れていますね。

川崎:2016年以降の大きな変化が、ブランディング会議を開始したことです。t.c.k.wの立川裕大さんのディレクションのもと、商品のパッケージやカタログなどのグラフィックデザインをPRISM!の中村圭太さん、Webサイトやネットショップによるブランディング・販売促進のための施策についてはネットビジネスエージェントの久保圭樹さんに加わっていただき毎月会議を行っています。

商品パッケージのデザインを検討したり、商品開発についても話し合いを行っています。母の日や父の日、敬老の日、季節ごとのイベントなどに合わせたキャンペーンの打ち合わせなどの場合も、以前は営業会議が月1回ある程度でしたが、外部の方にサポートいただくことで、新しい動きが組織に生まれるようになりました。特に今まではあまりなかったBtoBのお取引やお問い合わせを頂くことが増えましたね。

例えば杉谷本舗のロゴは、以前は杉の木をモチーフにしたロゴでしたが、2011年に200周年を迎えた後、自分達の思いを込めたロゴに一新しようということになりました。新しいロゴは、七宝柄をベースにした、お米をモチーフにして中村さんにデザインしていただきました。杉谷本舗の社訓でもある「真心」が延々と続きますように、という願いを円で表しています。円の中にある4つの楕円状のものは、杉谷本舗の起源であるおこしに使われ、杉谷家も大事にしてきた「お米」です。この4つのお米は、「従業員とその家族」、「お客様」、「取引先様」、「地域」を表していて、杉谷本舗が丸く収める、という意味が込められています。色は実った稲穂の黄金色をイメージしたものです。新しいロゴに変わったのは2016年からですが、以前のロゴをご存知の方からもすっきりしたねと言って頂けたりと、好評いただいています。

※七宝は仏教の教典に出てくる七種の宝のこと。金、銀、瑠璃(るり)、玻璃(はり、水晶)、しゃこ貝、珊瑚、瑪瑙(めのう)とされる。

杉谷本舗カステラ包装
杉谷本舗店頭ディスプレイの稲穂

杉谷本舗社訓「真心」
長崎出身の芸術家北村西望氏による社訓「真心」の書

杉谷本舗として今後取り組んでいきたいことを教えて下さい。

川崎:杉谷本舗のいいところ、強みというのは従業員みんなが家族のようなまとまりがあることだと思います。一人ひとりが自ら責任を果たしながらも、周囲の人たちに手を差し伸べてサポートする。そういう文化を大切にしながら、これからも地域の方々、お客様に大切にされる杉谷本舗であり続けるために、まずは今以上に従業員が働きやすい環境を作っていきたいと考えています。

Text: Yukie Ishibashi/Photo: Keiju Kubo、杉谷本舗提供(*1)

「長崎カステラ」伝統の技を受け継ぐ、杉谷本舗のカステラ»

LINEで送る
Pocket

ライター

Nagasaki365編集部

編集部

Nagasaki365編集部

Nagasaki365編集部です。長崎のイベントや人に関するコンテンツ、お知らせなどを投稿します。

https://nagasaki365.com